境野哲(IoT)

IoT は,モノや人や環境の安全管理や最適化に役立つ一方,それが悪用されたり管理が不十分だったりすると重大な社会問題を引き起こす可能性がある。 悪用される例としては,①盗撮盗聴(隠しカメラ映像を拡散しプライバシーを侵す等),②通信妨害(多数の機器から大量データを一斉送信し回線をパンクさせる等),③偽情報配信(偽造データを送信して社会を混乱させる等),④情報搾取(無線を傍受し機密情報を盗む等),⑤事故誘導(無人飛行機に偽の誘導信号を送って墜落させる等),⑥テロ(自律運転カーを遠隔操作してテロを引き起こす等),⑦サイバー攻撃(通信機器に不正なソフトを入れ動作不能にする等)などが想定される。 管理不十分による事故の例としては,①ハードウェア故障(センサーが壊れて誤ったデータが集計される等),②ソフトウェア不良(長期連続使用すると停止する等),③設定ミス(送信先を間違えて設定しデータを誤送信・紛失する等),④運用ミス(常時監視中の回線を誤って切断する等),⑤通信の渋滞(映像を送るカメラが多数設置されモバイル回線がパンクする等),⑥盗難・紛失(通信機器が盗まれて行方不明になる等),⑦互換性の欠如(独自仕様システムが乱立し相互接続不能になる等)などが考えられる。 広い分野で使われる IoT システムが,こうしたリスクを考慮せずに作られ運用されると,人権が侵害されたり,社会が誤った情報に振り回されたり,仕事や生活に必要な通信が途切れたり,犯罪に巻き込まれたりする事件や事故が頻発し,安心・安全が脅かされる。特にサイバー攻撃については厳重な警戒が必要で,政府も IoT セキュリティガイドラインを策定し対策を呼びかけている。